のんびりした土曜日の、昼下がりのケールパスタのゆくえ。

「やっぱり、早く寝ないとダメだね。」

うつろな目で寝室から下りてきた息子が、お昼ごはんに作ってあげたパスタをぼんやりと見つめながらつぶやいた。

梅雨の合間をぬって晴れわたった空の下では、ホトトギスがせわしなく鳴いていた。

「頭のなかが、ぼーっとする。」

そう言って、息子は顔を洗いにリビングを後にした。

普段、学校がある日は、わが家では遅くても夜10時には寝るようにしているが、そんなに早く寝る家庭はめずらしいのだと息子が言っていた。

仲がいい同級生の多くは、24時になっても起きているそうだ。

そうした話を聞いていたので、週末の金曜日くらいは寝る時間について何も言わないことにしている。昨晩は、横になって意識が遠のくなか、スマブラのオンライン対戦で楽しんでいる音が聞こえた。

「なんだか、1日がもったいないな。」

さっぱりしない顔で戻ってきた息子が席についた。

お昼ごはんは、ケールペーストを絡めたスパゲッティ。きっと朝ごはんは欠食するだろうと思っていたので、しっかり栄養がとれるメニューを用意した。

ケール葉とたっぷりのオリーブオイル、パスタのゆで汁。クルミとカシューナッツ、ニンニク、ニュートリショナルイーストをミキサーにかけたケールペースト。

そこへ豆とトマトを加えてパスタに絡めた、ケールパスタ。

そうそう、硫黄の香りがするブラックソルトを少しだけ加えたので、カルボナーラな感じもするヴィーガンパスタに仕上がった。

お好みでブラックペッパーを挽いていただく。

さわやかな胡椒の香りが鼻を抜けたあと、クリーミーなペーストが舌に絡みつく。そして豆のうま味、ときどきトマトの酸味が走り抜けるケールパスタだった。

「うまっ。」

息子の顔を横目に見ると、瞳が少しだけイキイキしたように感じた。

ようやく土曜日がはじまったような気分だった。

なにせケールペーストを作ったのは初めてで、参考にしたレシピもなく、思いつきと直感が頼りのスパゲッティで、ちょっぴり不安だったのだ。

スピーカーからは、ボブ・ディランの歌声がはっきりと聞こえてきた。

May you grow up to be righteous

(正しい人に育ちますように)
May you grow up to be true

(誠意ある人に育ちますように)
May you always know the truth

(いつも真実を見つけ)
And see the lights surrounding you

(君を囲んでくれる光に、気づきますように)

 

May you always be courageous

(いつも勇敢で)
Stand upright and be strong

(まっすぐ立ち、強くいられますように)
May you stay forever young

(いつまでも若くいられますように)

息子が食べている姿に安心して、娘がすわっていた向かいの席にも目をやると、盛りつけたまま、口にした形跡のないケールパスタが置き去りにされていた。

「なっ、どこに行ったの!?」

娘のことだ。

緑色でトマトも入っているし、見た目で判断して立ち去ったのだろう。子どものころ好きだったトムとジェリーを思いだした。

なんて逃げ足の早いやつ。

あいかわらず、遠くではホトトギスがせわしなく鳴いていた。