「広告代理店のみなさまへ」

ただ生きたより、生きたなら生きた意味を。生きたのだから。

キュウリがとれた、
キュウリはあげた。
タマネギなかった、
タマネギもらった。

ナスまでとれた、
ナスまであげた。
オクラもなかった、
オクラももらった。

食べきれないとあげるんだけど。
手塩にかけて育てただけに、
「おいしく食べてくれるかな」
と、心ざわめく。

食べきれないともらうんだけど。
手に負えないと言われていても、
「おいしく食べてあげるから」
と、心ときめく。

「たくさんできたよ。」
やさしい言葉につつまれて、
喰われるやつもいるだろう。

「こんなにできても。」
つめたい言葉につつまれて、
喰われるやつもいるだろう。

分かっているよな。
おまえらは喰われるだけの存在だ。

照らす日でしおれていたな。
吹き荒らす風に耐えたな。
雨粒をがぶ飲みしたな。
暗闇は不安だったろう。

幸せだったか、悲しかったか。
楽しかったか、怒り狂ったか。

鼻先につけてやる。
鼻腔すべてで、嗅いでやる。

キュウリだ、タマネギだ。
ナスだ、オクラだ。
顔が見える野菜?
顔のある野菜だ。

聞こえるかい。
子どもらの走る音。
聞こえるかい。
子どもらの騒ぐ声。

あいつらを生かすためにさ、
おまえらの息を止めるよ。

生きた証を、
口いっぱいに味わってやる。
約束だから、
あいつらに言わせてみせる。

キュウリが、おいしいね。
タマネギが、おいしいな。
ナスが、おいしくて。
オクラが、おいしかった。

梅雨晴れにウグイスがさえずる中で、
畝の間にたまった水もなくなって、
もたれるように生きていた菜園で、
また花は、空を見上げる。

ちいさな実、いろづく実。