「広告代理店のみなさまへ」

トマトが苦手な娘に、軒先で鳴りやまない雨音はいつしか。

どうやら小雨は静まった。

玄関先にあるちいさな菜園で、妻と子らの楽しげにする声が聞こえていた。妻と娘がケンカする音もして、しばらくたっていた。

家にもどってきた妻の背後から近寄り、彼女の手にあった黒トマトとピーマンを奪いとる姿がみえた。娘だ!そのままリビングにすべりこんで来た。

「トマトね、もう食べれるよ!割れてるけど!」

おてての中にある、ふくれて割れた黒トマトをながめて顔がほころんだ。トマトが苦手な娘のことだ。そうはいっても、意地でも食べないのだろう。

「ピーマンなんて、こんなに大きいの!」

おくれて入ってきた妻も「ジャンボピーマンに見えるでしょうけど…」と口をひらきかけた時。娘が、思い出したように視界をさえぎった。

「ふつうのピーマンなのに、おっきいの!」

目も、ほっぺたも丸くして。

その時の、はちきれそうにやわらかい娘の表情を回想しながら。昨晩、みんな大好きな「妻の天ぷら」をいただいた。

あの黒トマトとピーマンは箸休めに。氷水で「シュッ」とさせて丸かじりすることにしたが、やっぱり娘だけは食べてくれない。その時だった。

「今日ね、給食でミニトマトをおかわりしたの!」

私も、妻も、息子も。だったら「このトマトも食べろよ!」と、心のなかでツッコミを入れたに違いない。みんな顔をあげて、いぶかしげに娘の目をみつめたが、彼女は動じなかった。

「ほんとに!ミニトマトおかわりしたの!」

最近、ほかの食材といっしょなら「生トマト」を食べられるようになった娘。どうやら本当に生トマトを、「ジュルモジャの味がする」とおそれていた生トマトをおかわりしたらしい!

聞こえてきた軒先にあたる雨音までもが、手をたたいて祝福をしている。

降れ!降れよ!もっと降れ!

大粒の雨でかまわない。もっと娘に祝福を!

ついに、この日が来たのだから!