「広告代理店のみなさまへ」

「ウォーリーをさがせ!」も楽しいが「やけどをさがせ!」も面白い。

「花火でやけどしたの。」

寝転がってスマホをいじっていると、背中にまたがってきた娘が泣きそうな声でいった。

お友達と駆けまわり、はしゃいでいた時は、痛がるそぶりなんてまったくなかったのに。

こちらの疑念に気がついたのか、「この苦しみを感じて!」といわんばかりに、私の背中をバンバンたたきはじめた。

海水浴場で水泳帽をかぶり「髪は女の命ばい。」と、クールに語っていた彼女とは思えないほど、強く。交互に手のひらをふりあげては、強くたたいてきた。

それでも素っ気ない返事をくりかえすと、今度はおおきく腰をうかせて「ドシンッ!」とおしりで踏んできた。

ドシン、ドシン、ドシン。

あまりの衝撃にびっくりして、思わず気にかけてしまった。

「やけど、しちゃったの?」

「花火でやけどしちゃったの。すっごく痛いから、写真に撮ってみせてほしいの。」

しおらしい表情をみると、つくづく女は女優だと思う。花火をした日は5日前だ。いまさら痛いわけがない。

しかし、そんなことをいったところで、彼女が引き下がるわけもなく。となりの部屋へいこうと、しぶしぶ重い腰を浮かせた時だった。

「もう、カメラはあるの。」

すべてお見通しだった。観念して、マクロ撮影モードに切り替えて、ファインダーをのぞく。

カシャカシャカシャカシャカシャ

カシャカシャカシャカシャカシャ

カシャカシャカシャカシャカシャ

彼女の気持ちが収まるように念じていたのだろう。連写する音が、念仏のように部屋で響いた。

「ほら、ここだよ!やけどしてる!」

波打つように足裏の紋様がひろがるなか、ちいさな指の先に、もっとちいさな丸いものがポツリとあった。

ちょっとだけ「ウォーリーをさがせ!」で遊んでいる気分になって、口元がぴくりとゆるんだ。

「やっぱりだー!いたいよー!」

さけびながら、娘はしっかりとした足どりで、床をふみしめながら妻のもとへ去っていった。

おだいじに。