「広告代理店のみなさまへ」

みずみずしい「初物キュウリ」は、めぐりめぐって誰の口に。

金曜日、息子がつかれた顔をして帰ってきた。

自分がサラリーマンの時には、週末になると「どこへ呑みにいこうか」と、それはそれは浮かれていたのに。彼らの金曜日は沈んでいた。

「夕飯は、BBQにしようと思って。」

玄関先でばったり、どんよりした「ただいま」を見てしまった後では、どんな返事がくるのか不安でしょうがなかった。

(BBQするのか、しんど…)

そう思われないか心配だった。

「これからBBQをしよう。」

そう伝えると、彼らの表情は急変して「ぱあっ」とあかるくなった。まるで「一杯、いきますか!」とガードレール下にむかうおっさんのように、しあわせになる笑顔だ。

「バーベキュー!?やった!」

成長期のおっさんたちは喜んでいたが、成熟期のおっさんである私にはまだまだ物足りない。

もっと疲れがふっとぶような、しあわせをつくってあげたい。

(なんて素敵な父親なんだろう)

自分に酔いながら、「とりあえずサイダー」を用意したことは思いだした。

しかもペットボトルではない、缶のやつだ。大人はビール缶、子どもたちはサイダー缶で「かんぱーい!」これだけでもテンションあげあげ、ヒアウィーゴー。

が、BBQにシュワシュワ炭酸は定番だ。

さらに、テンションが高くなる「ビールと豚バラ串!」みたいな。汗をかいてきた週末の、彼らのノドをうるおす食材はないものか。

とおくで、カタカタと音を立てはじめた炊飯釜を気にとめて、炭火をながめているときだった。

崖上の菜園になる「初物キュウリ」を思いだしたのだ。

「そうか、冷やしキュウリだ!」

カリッ!

じゅわっ!

ゴクリッ!

思わずひざを打った。着替えたばかりの息子たちに声をかけて、菜園に向かってもらう。やはり、みずから収穫した食材は格別だろう。

「げー!この草、ちいさなイモ虫がめっちゃおる!」
「きもっ!どこー?教えて!」

双子がさけびながら崖をのぼってゆく。なんと、ほほえましい姿なんだ。

最近、他人の赤ちゃんをみるだけで顔がほころぶ、孫が楽しみでしょうがないジジイ街道まっしぐら。だけど、まだまだ息子でハートウォーミング。

「摘んできたよ!」

息子たちの、この晴れやかな顔よ。仲良し同盟をむすんで「パパくさいよねー!」とさげすむ女衆に、彼らの爪のアカを煎じてやりたい。

氷水で「キンキンッ」に冷やして、肉を焼きながら息子たちが、清らかな表情でかじりつく。

その、予定だったのに。

「いただきまーす!あっ、おいしそー!」

最初にかじりついたのは娘だった。それを、きっと心のなかで「しょうがないよね」とつぶやきながら、やさしくみつめる息子たち。

あぁ、女って生きものは。

カリッ!カリッ!カリッ!カリッ!いよいよ順番がまわってきた。

「カリッ!」

採れたて、冷やしたてのキュウリのおいしさは格別だった。

(はあぁ、おいし…)

「はやく!キュウリ2周目!また私から!」

あぁ、男って生きものは。どうしてこんなに娘にあまいのだろう。