「広告代理店のみなさまへ」

悪だくみにも、けがれたものと、うつくしいものがある。

撞木(しゅもく)がゆれる。

おおきくゆれて、寺の鐘をつく。

「ぐぉうぅぅぅん…」

お寺さんから聞こえてくる鐘を合図にしたかのように。先週末、家族みんな玄関にでて、障子を洗ってキレイにした。

「ぐぉうぅぅぅん…」

いつも遅れることなく鐘がなる。それもそのはず、お坊さんがつくわけではないのだ。時代は21世紀、鐘をつくのも機械化されている。

「ぐぉうぅぅぅん…」

ひとり。

「ぐぉうぅぅぅん…」

また、ひとり。

「ぐぉうぅぅぅん…」

またまた、ひとり。

「ぐぉうぅぅぅん…」

トルネード投法でばったばったと三振にうちとる野茂英雄が、マウンドに立ったかのごとく、場から子どもらがいなくなった。

炎天下のなか。気づいたときには妻とふたり、障子をはずしては玄関先で水をかけ、洗って、干してゆく。

子どもたちよ。

部屋のすみで隠れている子どもたちよ。

もはや障子はないのだ。君たちがサボっているのは分かっている。おとなしく出てきなさい。君たちのお父さん、お母さんが悲しんでいるぞ。

いや、どんな罰をあたえてやろうか。

グフフ…

雑念を抱きながら部屋の障子をはずしていると、つかんで持ちあげた障子が、おおきくゆれて左足の人差し指に突撃した。

「ぐぅおぉぉぉうっ!!!」

ドクドクドク、あかいやつが。爪がはがれたのか、あかい液体がじわじわと漏れでてきた。

(だ、だれか坂東英二を!ちがう、バンドエイジを!ちがうちがう、バンドエイド。バンドエイドだ!)

「バンドエイドどこだっけ!?」

なんで私だけバチがあたんのよ。