「広告代理店のみなさまへ」

子どもに自慢される、格好いいオジサンになろうと思ったのに。

‪娘がえらんでくれたコーヒー。‬

‪娘がえらんだ、というだけで、どうしておいしいのだろう。彼女の会話、仕草、笑顔。‬‪こういうのが社会だった気もしてなつかしい。‬

鏡にうつる娘をながめていると、うしろに息子がみえた。たまには息子も伝えよう。

鏡から目をうつすと、妖気をキャッチした寝ぐせ、はみだした肌着。こ、これは・・・わたしの生き写しじゃないか。

社会を案じるヒマなどなかった。

まずは顔を洗って出直そう。

ついでに、自分の寝ぐせをなおそう。

気持ちをガラッと変えて、洗面所にたって、鏡をみつめてニヤリ。うん、オジサンがいる。とりあえず毛先に水をつけた。

直毛すぎて、後頭部にできた寝ぐせがもどらない。「そういや羽生善治さんも寝ぐせがチャーミングだし!」なんて誘惑に負けそうになるが、彼は「史上初の七冠達成」した実績があるから許されるのだ。

わたしのは、中年の寝ぐせ。

とりあえず、ニヤリ。

さすがに二回もほほえむオジサンは気持ちわるかった。

髪の根元に水をつけても寝ぐせはおさまらず、さらに水をつけて髪はびしゃびしゃになった。

鏡にうつる後頭部は絶壁頭。いよいよ悲しくなってきたので、いそいでドライヤーをあてると、ふたたび妖気をキャッチして寝ぐせが立った。

まいりました。

投了します。

席についてコーヒーを飲みなおしていると、スピーカーからボサノバ調で「ゲ、ゲ、ゲゲゲのゲ〜♫」。

そうか、どうりで妖気をキャッチするわけだ。

音楽は終わったが寝ぐせはおさまらず、朝と変わらないオジサンの一日がはじまった。