「広告代理店のみなさまへ」

うたた寝して「はっ!こんなとこまで来たの!」ってこと、あるよね。

ずっと「勘違い」していた。

リップスティックとかいうスケボーみたいな乗り物にのれるようになり、「運動得意かも」という勘違いがゲリラ豪雨のように発達していった。

そりゃそうだ。

記憶のかぎり、小学生のころから。

逆上がりもヘタクソだし、持久走もシンドイし、ダンスもあまりのリズム感のなさに悲しくなった。

体育のおかげで、運動がキライになった。

そんなやつが、子どもに負けじとリップスティックを軽快に乗りこなす。

そりゃ、勘違いするよ。

降りしきる雨音がする電車で、となりに女性がすわってきて「ひょっとして気に入られてる?」級の勘違いだ。分かってるけど悪くない、むしろ心地いい。

まるで温泉につかっている気分だ。

「おれ、運動神経いいやん!」

声を大にしていいたい。

「おれ、運動神経いいやん!!!」

どんな運動も簡単にこなしていたクラスの人気者たちが、こんな幸福感に満たされていたなんて。これは温泉じゃない、愛だ。自己愛だ。

おれ、イケてるやん!

そしてついに、勘違い鉄道はどしゃ降りのなかターミナル駅に到着した。

おれ、若いやん!!!


「はっ。」


ついに、夢から覚めてしまったのだ。

40歳になったオッサンの「若さ自慢」ほど、この世でみっともないことはない。そのうち、

「オレやっぱ、モデルみたいな子がタイプだから。」

「20才の年の差婚ってことは、オレだと20才の子と…ってことだ。」

「IT社長が剛力彩芽や石原さとみと付きあうなんて夢があるよな。」

などと勘違いの極地まで乗り換えていくに決まってる。イヤだ、そんなガラガラの快速電車には乗りたくない。しかし、だからといって始発駅までは戻りたくない。

とりあえず、途中下車しよう。

あぶねぇ、あやうく路線を間違えるところだったぜ。