「広告代理店のみなさまへ」

熱愛らぶらぶカップルの訪問に、わが家はあわてふためいた。

いま住んでいる空き家には倉庫がある。

むかしの家によくある牛小屋で、いまとなっては倉庫につかえる、だだっぴろい空間だ。

もちろんニオイなどない。

屋根を増築して家とつながっているため、掃きだし窓をオープンにして、倉庫の窓やシャッターも全開にすれば、そよ風がすりぬけていく。

2.7m先にダイソンの扇風機を10台ならべたような贅沢感だ。

目をあけると、牛小屋。

そして、そっと、目をとじる。

そよ風を感じながら、ランチにたべた肉蕎麦をおもいだして、ゆったりくつろいでいる時だった。

「キャーッ!ギャーッ!!!」

妻の悲鳴に、風もとまった。

目をやると、まっくろい生きものが「あおり運転よろしく」といわんばかりに、部屋のなかでビュンビュン飛びまわっていた。

どうしたんだぃ。

まってくれよぉ。

なんじゃあ、こりゃあぁぁ!

きっと松田優作も、撃たれたことに気づいて、こんな気持ちになったのだろう。写メをとる余裕もなく、滑空するまっくろい影におびえるしかなかった。

そうこうするうちに、妻が気づいた。

「つ、つばめよ!」

そうなのだ。

全開にしていたシャッターから、最近パートナーが見つかったばかりの熱愛カップルつばめが、家をさがしにきていたのだ。

あおり運転しにきたわけじゃなかった。

しかし、「かわいいねぇ」なんて、田舎のジイちゃんバアちゃんみたいなことをいってる暇はなかった。なにせ、こんな倉庫に巣をつくられた日には、24時間ずっとシャッターを開けなければならない。

つばめよ。

ここは、セブンイレブンではない。

「夜はシャッターを閉めるから」と、カーテンをつけていないため、お風呂あがりに素っ裸で走りまわることすらできなくなる。

「あそこ、変態がいるわよ…」

なんてウワサにでもなれば、田舎のことだ。きっと村八分にあうだろう。

つばめよ、すまない。

そう心でお詫びしながら、やむなく閉店がらがら、シャッターを閉めることにした。

しかし、まだ時間はお昼どき。

ここ2日間ずっと雨だったのに。太陽が恋しいのに。イチャイチャ新婚つばめの新居さがしでシャッターを閉めるなんて、なんかくやしい。

だから、地面から50cmほど開けることにした。

はぁ、そよ風が…

そんなセンチメンタルな気分にひたっていると、隙間をすりぬけて、あいつらがまた入ってきた。

なんじゃあ、こりゃあぁぁ!